Print Icon
 
   

皆さまこんにちは。UnlocXが世界のFood Innovation、フードテックに関するニュース、イベント、コミュニティ情報をお届けするNewsletter “Foodtech EYES”です。

今号は普段のNewsletterから少し視点を変えて、Future Foodカテゴリに注目し、2026年Q1の資金調達動向を公開情報から分析した内容を皆さんにお届けします。


公開されている資金調達ニュース*を横断して見てみると、2026年Q1では少なくとも30件・3億ドル超の資金流入が確認されました。件数と金額については引き続き一定の規模で行われているように見えますが、カテゴリや地域、資金の出し手といった切り口でより詳細に見ると、これまでとは異なる以下の6つのトレンドが見られました。


① 地域別では、欧州は相対的に活況、北米ではより市場性が重視

② 資金の中心は「食品(食品ブランド)」ではなく「原料・製造」に

③ Plant-based(植物性食品)は“勝ち筋限定市場”に

④ Cultivated meatは“回復”ではなく“選別フェーズ”

⑤ 新たな主戦場は「供給制約原料の代替」

⑥ リスクマネーに頼らない多様な資金調達先の存在感


それでは、各トレンドの具体的な内容を掘り下げていきましょう。


① 地域別では、欧州は相対的に活況、北米ではより市場性が重視

まずは地域別の状況ですが、Q1の30件のうち半数以上が欧州発または欧州主導案件で、精密発酵、乳製品代替、卵代替、培養肉、バイオ素材まで幅広く資金を調達しています。大~中規模の案件だけでも、

など地域としての厚みが分かります。
また、後述の通り、欧州では政府の資金提供が広がっており、単に件数が多いだけでなく、政策資金・研究基盤・事業会社連携を含む“産業としての勝ち筋”が整っていると言えそうです。

一方で北米は、案件は複数あるものの、数は絞られ、投資判断がシビアな印象です

などで、いずれも商業化の実現性が見えている(きている)案件で、特にBlueNaluは既存投資家の追加出資を中心としたラウンドで、現在の北米市場が「新規テーマへの過熱」ではなく、既存投資家が見極めながら次のマイルストーンを支える市場になっていることが分かります。


② 資金の中心は「食品(食品ブランド)」ではなく「原料・製造」に

次にカテゴリの切り口で見ると、Q1では食品ブランドではなく、原料・製造・バイオ技術に資金が集まっていることです。

精密発酵や微生物タンパク、機能性原料といった領域が10件超と件数で最大なだけでなく、金額でも最大で、複数カテゴリに供給可能なB2Bプレイヤーに資金が厚く張られています。

具体的には、代表案件だけでも、

と少数の大型案件だけで大きな金額を占めています。

このように投資の観点が食品産業全体のサプライチェーンに組み込まれる“インフラ”になり得るものに直接投資をする形に変わってきています。

その観点では、精密発酵により動物性由来ではないカゼインタンパクを製造するStanding Ovationは国営銀行だけでなくDanone、Belというフランスの大手乳製品メーカーも投資をしており、将来的なサプライチェーンを見据えた象徴的な案件と言えるでしょう。


③ Plant-based(植物性食品)は“勝ち筋限定市場”に

植物性食品の資金調達は引き続き存在するものの、選別が進んでいます。

植物性食品の資金調達は、Q1に確認できますが、金額もテーマもかなり絞り込まれています。

など、いずれも単なる「植物由来」ではなく、高たんぱくバー、チーズのように代替対象が絞られた明確な食品・食材になっています。つまり、「サステナブル」だけではなく、どの機能を代替し、実際に売れるものという実需に応え得る企業への投資のみが進んでいると言えるでしょう。


④ Cultivated meatは“回復”ではなく“選別フェーズ”

培養領域も引き続き資金調達は確認されていますが、これまでのような大型ラウンドは見られず、

  • 規制の進展

  • コストダウンの見通し

  • 商業化への道筋

といった実現性が見えている企業に資金が集中しており、 「期待を込めた」テーマではなく、「社会実装が問われる」テーマへと見られ方が変わってきています。

具体的な案件としては、培養領域では、Q1に少なくとも数件の資金流入が確認できました。

など、R&D段階の案件もありつつも、商業化・規制対応・コスト低減の文脈が強い案件に集中的に資金が集まっている傾向が見て取れ、特に培養肉については以前のような「培養肉だから大型資金が付く」局面ではなく、規制の進展、量産設計、価格低下の道筋が見える企業へと投資対象が絞られています。Green Queenも2025年の代替タンパク投資総額が前年比20%減で$1B割れだったと整理しており、Q1の培養肉調達もその延長線上にあると言えそうです。

また、イギリス食品基準調(FSA)が2027年初頭までに培養肉の承認を目指す方針の一方で、アメリカのミシシッピ州ではチーズやミルクなどの培養乳製品の販売禁止法案が可決され、世界でも規制・政治の追い風と逆風が同時に存在する状況になっています。


⑤ 新たな主戦場は「供給制約原料の代替」

今回の資金調達で特に目立つのが、

  • カカオ代替

  • コーヒー代替

  • 卵代替

  • 乳成分代替

といった既存原料の代替素材です。より具体的には、

背景にあるのは、

  • 気候変動

  • 原材料価格の高騰

  • サプライチェーンの不安定化

であり、投資の背景も「サステナブル」ではなく「既存の供給問題・価格高騰の解決策」へと変化しています。

この流れは日本においても同様で、昨年10月には卵代替製品を開発・製造するUmami Unitedが3.1億円の資金調達を実施しました。スタートアップ以外でも、不二製油は代替チョコレート「アノザM」を昨年3月に発売イオンも代替チョコレートを昨年6月にPBのトップバリュから発売しており、今後私たち消費者が実際に目にする機会も増えていきそうです。


⑥ リスクマネーに頼らない多様な資金調達先の存在感

フードテック領域では研究開発・規制・設備投資・市場形成に時間がかかることから、一定期間での回収を求めるVCを中心にした資金調達モデルから、政府による助成、政府系ファンド、億万長者による個人基金などの多様な資金調達先を組み合わせるモデルへと変遷しています。

まず欧州では、EUや政府のサポートが強く見られ、産業育成を踏まえた資金提供がなされていることが伺えます。

より詳細に見てみると、

と複数の公的資金の参加事例が確認できます。つまりFoodtechは、少なくとも欧州では、VCだけで回る市場というより、産業政策と一体で育成される市場になっています。


一方、厳密には今年のニュースではないですが、アメリカ発でJeff BezosやBill Gatesといった億万長者によるファンドや財団のグローバル規模での資金提供がVCや政府に続く第三極として存在感を高めています。特にJeff Bezosの動きは興味深く、Bezos Earth Fundは、食分野で全体として10億ドル規模の“Future of Food”コミットメントを掲げ、その一部として持続可能タンパクの研究拠点群と、代替タンパクのエコシステム整備にかなり大きな資金を投じており、2024年にNorth Carolina State UniversityImperial College LondonNational University of Singaporeにそれぞれ3,000万ドル、合計9,000万ドルを投じています。


また、Good Food Institute(GFI)には代替タンパクの技術ロードマップ、人材確保、規制ルート整備、必要な投資・インセンティブ形成を目的に9.8百万ドルを助成しています。さらに、2025年には、UC Davis、American Heart Associationなどに対する200万ドル助成で、AIを使った食品設計プロジェクト“Swap it Smart”も支援しています。


これらから見えるのは、Bezos Earth Fundは、「市場がまだ成立していないが、社会的には必要な領域」に先回りして土台をつくるプレーヤーとして資金提供をしており、政府のように規制する権限は持たず、VCのように短期回収も求めない一方で、大学・NPO・研究者・産業界を束ねる“触媒”となる新たな存在になりつつあるということです。

日本においては新たな資金提供のモデルはどのような形になるのでしょうか。


以上のように、2026年Q1のFuture Foodカテゴリの資金調達から見えるトレンドを見てきましたが、いかがだったでしょうか。今後も定期的にこのような特定のテーマ・カテゴリにフォーカスしたニュースを配信しようと考えているので、ご意見・感想があればぜひ教えていただけると嬉しいです。


*本カテゴリの代表的なメディアであるGreen QueenおよびVegconomistを参照・分析


その他の情報🌱

📆フードイノベーションに関するイベントカレンダー

📕Foodtech EYESでご紹介してきた書籍リスト

📰
Foodtech EYESのこれまでのアーカイブはこちら


それでは次回のFoodtech EYESでお会いしましょう。


本メールは、株式会社UnlocXのメルマガ登録者ならびに、過去に弊社メンバーと繋がりのある方、名刺交換させていただいた方、当社が開催した各イベントにご参加頂いた方にお送りしております。配信を解除されたい場合は、最下部を御覧ください。

     
     

■ Distributor / Sender

UnlocX Corporation (UnlocX & Co.)

https://unlocx.tech/en/

---

■ Inquiry

foodtech_eyes@unlocx.tech

---

■ Subscribe

If you would like to subscribe with a different e-mail address, please click the URL below.

Click the link below to subscribe.

*Please share the link with your colleagues and friends.

https://forms.zohopublic.jp/unlocx/form/FoodtechEyesSubscriptionForm/formperma/xQbNd5gBK8k4crrvrZc8ruhQufLEGnWqPw4ulAo08do

---

Unsubscribe